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詩 We are Waiting. Who…

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僕らは、待っている。誰かが愛してくれるのを。

その結晶として生まれた僕らだのに、

泣き叫び出でた世界には、愛の欠片の薄片さえも、

そんなものは何処にも、残ってはいやしなかった。

損な僕らの、飢えて違う心の下層が、全てを欲しいと叫ぶから。

僕らは、待っている。誰かが、その手を差し伸べてくれるのを。

その優しく大きな手の平が、

冷えきった露地に座ったままの、僕らの前に現れる。

そんなありえない夢ばかりをみていたら、やがて心は、凍っていた。

一人で立ち上がる為の術なんて、誰一人、教えてはくれなかったから。

僕らは、待っている。誰かが道を、指し示してくれるのを。

夢は叶わず、努力に意味はなく、正直者は馬鹿をみる、

世の中には、悪党ばかりが蔓延って、ズルや卑怯が成功への近道だった。

汚穢に塗れて飲み込んで、臓腑の底まで腐った僕らの、

泣いて叫んだ蛮声は、丸で畜生の唸り声。

喉から溢れた哭声は、人の耳朶さえ響かせず。

僕らは、待っている。いつか誰かが、幸せな場所へ連れていってくれるのを。

傷付けられ、騙されて、嘲笑され、踏みにじられて、

そうして塵と潰れてしまった心では、

自分で歩む気力さえ、もう、湧いてはこないから。

そうやって、連れて来られた先で……、

死んだ方がマシだったと思える場所で……、

死ぬ気力さえも奪われて、死人の如く歩む僕らは……、

でも、僕らは……

どうして……、

どうして、誰かを、愛さなかったのだろう?

どうして、誰かに、手を差し伸べなかったのだろう?

どうして、誰かに、道を示さなかったのだろう?

どうして、誰かを、幸せにしなかったのだろう?

どうして、僕らは……、

この世界に、生まれたのだろう?

「――くそっ」

 人の居なくなった放課後の教室で、俺は--、

 --グシャッ! とプリントを握り潰す。

 そこに書かれていたのは『最優秀賞』と評された、クラスの女子が創作した詩。

 綺麗事ばかりを並べ立てる脳天気なその詩が、癪に障ったのだ。

 御為ごかしを継ぎ接ぎしたような、安直な正論の詩なんて、心底気に入らなかった。

 そして、そんな綺麗事に感動したと吐かしていたクラスの奴らには、反吐が出た。

 言行一致せず矛盾をきたす善人面。

 新学期早々、クラスの中で一番大人しそうな男子に対して、大した理由もなく始まった虐めは、やがて彼を不登校にさせて、人生を狂わせた。そして、人一人の人生を狂わせておいて、その自分達の醜悪さも省みず、それでも、自分達は綺麗だなんだと思い込み、綺麗な詩を賛美する、そんなクラスの奴らが大嫌いで、彼を助けきれなかった自分も、大嫌いだった。

 だから俺は、握り潰したのだ。

 こんな、ただ綺麗なだけで何も変えられないような、無力な詩を……。

 そりゃあ俺だって、子供の時分は信じていた。詩のような世界を。

 けれど、現実の世界は詩のように甘くは無い。無かった。

 止めろと説いても陰での悪行は絶えず、衰えず。訴えても聞く耳を持たない教師の諦念と無関心は……そして、せめて自分だけでもと親切にしてみれば好意は裏切られ、必死になって助けようと差し伸べた手は掴まれて引き倒された。

 それは違うと示した道は毀笑されて指さされ、分けようとした幸せは、いつのまにか全て奪われていた。

 それが、此の世界の現実だった。

(……こんな詩は。……大した人生を歩んでない奴の、ただの妄言だ……)

 両手でプリントをグシャグシャと握り潰し、椅子に座ったまま、その紙屑をゴミ箱へ向かってぶん投げる。

 丸め込まれて潰れた紙は、教室の隅にあるゴミ箱の縁に当たって、床へと落ちた。

 その風景に何故か怒りが湧き、拳が震えた。が、虚しくなって天井を仰ぐ。

 そして、そんな中、鈴の様に空気を震わす女の声が、教室へと流れ込んだ。

「……ゴミはゴミ箱に。それは偉いよ? でも、投げちゃダメだよ?」

 顔を上げると、後ろの引き戸から入ってきたのだろう、最近転校してきた女が居た。

 気に食わない女だった。

 五月なんていう微妙な時期に転校してきたにも関わらず、その娟麗な容姿と人当たりの良さで早々に幾人も友人を作り――けれども、少々規則に五月蠅く、一部女子から煙たがられている。そして、それを自覚している様子は見せるのに、その実直な性格を直そうともしない馬鹿な女で――いけ好かない女だった。

「はぁ……。キミってたまにイライラしてるよね? ……どうして?」

「…………」

 俺は無言を返し、顔を背ける。

 ほら、こういう所がいけ好かないのだ。

「……ねぇ? 私の話、聞いている?」

 俺の前へと歩いてきた女は、小首を傾げて尋ねてくる。

 どうせ顔を逸らしても、いつもの如くイタチごっこになるに決まっている。なので無言で、思いっきり睨んでやった。

「…………」

「…………そんなに見つめれると、ちょっと恥ずかしい」

「はぁ!? お前な――っ!? くっ……」

 これがコイツの手だ。

 基本、無言を貫こうとする俺と、なんとか話そうとして突拍子も無い事を言い出す女。

 クラスの奴からも再三放っておけと言われているのに、この女は一向に聞きやしない。

「……このっ。学習能力無い馬鹿女め……」

「ふふっ。独り言、漏れちゃってるよ? ご機嫌斜め?」

 女はスカートを――臀部を押さえながらも俺の机の前にしゃがみ込んで、小首を傾げて上目遣いで見上げてくる。その細い指先が机の端を掴んでいるのも一種の愛嬌か。長い睫毛とくりっとした鳶色の瞳が、不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。

 彼女は目をぱちくりと瞬かせ、本当に純粋に不思議がっているようだった。……彼女はいつもそうだ。そこに意図や贋作らしさは微塵もなく、この女の成分はきっと、半分が純真で、もう半分が無垢だ。

 その真っ直ぐな微笑み。

「…………っ」

 何故か顔が火照って、思わず顔を逸らしてしまった。

 女は少し拗ねたように「むー」と唇を尖らせて、それから言った。

「……時には、学習能力のない馬鹿でもいいと思うよ?」

 女は続ける。

「だって私は、何を学習したって、何を言い聞かせられたって、もしそれが間違っている事だったのなら、絶対に間違っていると思うから。……嘘を本当だと信じ込むのが学習だって言うのなら、私は死ぬまで学習なんてしないよ」

 ……ああ、知ってるよ。あんな詩を書く女だ。俺も、その種の思考回路が分からない程の馬鹿じゃない。まだそこまでは、現実から目を逸らしてもいない。でも。

 俺は言った。

「いくら詩を上手く書けたって……」

 俺は続けた。

「いくら言葉を紡ぐのが上手くても、どんだけ口が達者だとしても、そんなの、何の役にも立ちはしない。現実じゃ正論なんて通じないんだ。あんな綺麗事、現実を知らない甘っちょろい戯れ言だって、馬鹿にされる。それが落ちだ」

「うん……そうかもしれないね。……確かに、そうだった」

「……っ。なら、そんな綺麗事、一体何の役に立つんだよっ?」

 感情が漏れた。

 ソンナモノは、ヤクにタたないゴミクズだ。

 冷静さこそが、理性こそが、理論こそが、この畜生ばかりの世間を渡る術だと信じている。なのに、

「そうだね。綺麗事なんかを信じてても、苦しいだけかもね」

「だろうが……そんなもの、信じてたって――」

 言い掛けて、ふいに、直感が頭を刺した。

 過去の記憶が、脳裏を過ぎる。

 差し伸べ握った小さな手、交わした約束。

 淡く幼い恋心は成就せず、泡沫へと消えた、遠い過日。

 別れ際の面影が、目の前の女に重なった。

「……うん。キミの言う通りだったよ? ズルっ子に正しさを説いた所で、逆に、卑怯な手段でこっちが貶められるし、お金や何かを貸したとしても、そんなものは返ってこない。一人でもをと正しい道を歩んでみれば、罵声と冷笑は止まらないし、誰かに安息をと願ったところで、自分の息が苦しくなるだけ。……本当に、世界はそんな風に出来ている」

 女は言った。恐らくその体験を。

 その言葉は大いに耳障りだったけれど……、でも、その旋律は歌のように心を震わせて、

 その言の葉は、お伽噺でも語るがの如く、河の流れのように澄んでいて、そして――、

 濁っていた。

「私、転校多いからね? そんな事ばっかりだったよ? でもそれは当たり前、因果応報の自業自得。そりゃ急に入り込んできた異物が口出しなんてしたら、誰だって排除するよね? 人間ってそういう風に出来てる。私が、物を知らない馬鹿だったってだけ」

 女の綺麗な瞳に陰が指す。

 けれど、夕焼けを反射する潤んだ瞳は、熾火の如く熱を持っていた。

「でも、私は曲げられなかった……」

 真摯な瞳が、じっと見つめてくる。その奥底には、熱情と脆さがあった。

 女はやがて立ち上がり、俺を見下ろしてきた。

 その視線は、不愉快なはずなのに、何故か心地がよかった。

「私は、心からの自分が間違っていると思うことを、言ったり、したり、見て見ぬフリでやり過ごしたりするなんて、そんな事、絶対に出来なかった。したくなかった。そして、その逆も。心からの自分が、正しいと思うことを、黙ったままでいたり、しなかったり、見過ごすなんて、そんな事、絶対に出来なかった。したくなかった」

 かくも話した女は「ふっ」と泣き笑いを浮かべて、心底心細そうに自身をかき抱く。

 夕風と何かに身震いし、その細い腕を握る可憐な指先に、ギュッと力が込められる。

「上靴に画鋲なんて茶飯事で、椅子の画鋲で血を流すなんてのは数多度。物が消えるのは神隠しかのようで、お花を摘んでいる時にお水が降ってくるのなんて、驟雨と慈雨と、虎が雨と、またかくのごとし。……本当に、何度死のうと思ったことか。……死んで地獄にでも落ちてた方が、よほどマシな人生だったかもしれない……」

 敵意を向けられる恐怖と、害意によって受けた痛苦。

 犯人が分からない苦悶と、大勢に責め苛まれる孤独。

 それらを瞳の奥に浮かべた女へ、俺は何かを言いたくなり……、

 けれども、ほんの僅かな言の葉さえ、俺の口からは出てこなかった。

 それこそ、女を散々に無視してきた応報だと思った。

 彼女に、俺は、何を言えば良いのか。

 それが、本当に分からなかった。

 彼女の、独白が続く。

「でもね。私は負けなかったよ? 相手がどんなに卑怯な手段に訴えてきても、絶対に負けないって反抗した。例え負けちゃっても、次こそは負けないようにって、心までは絶対に屈したりはしないって、そう思って、生きてきた。……生きられた」

凜乎たる、しかし痛嘆と痛苦に濡れた眼差しで、彼女は言う。

「どんなに無謀でも、どんなに無知でも、どんなに無駄に思えても、でも、ちゃんと頑張れば、しっかり立ち向かえば、自分を諦めなければ、きっと、見てくれている人は居るんだって。正しさを信じた事は、決して無駄じゃなかったって、そう、教えてくれた人が居たから……。だから私は。……私は、あの詩のように本気で思う。だって……」

 俺の横へとしゃがみ込んだ彼女は、真剣な眼差しで見上げてきた。

「だって、それを私に教えてくれたのは……」

 じっと見つめてくる潤んだ瞳と、ぽっと紅が差したような、夕焼け色の頬。

 そんな彼女の目端から一粒の雫が零れ、深緋色に煌めいて、紅い頬を伝って頤へと、そして、彼女の握った拳へと、膝上10センチのスカートから覗くすらりとした太ももへと、落ちていった。

 場違いだとは思っても、その細く嫋やかな素足に思わず見惚れてしまう。

 染みのない綺麗な生足が、次々と零れ落ちてくる滴を弾き、柔肌に残る水滴が彼女の内ももへと、濡れた跡を撫でるようつけていく。

 その艶と涙に俺は狼狽して、

「でも、あんなのは……世に幾らでも溢れてる、綺麗事を並べただけの、ただの駄文だ」

 ああ……。違うのだ……。

 俺は今、そんな事を言うべきじゃない。

 何か、もっと、違う言葉を彼女へ……。

 でも口先は、勝手に言の葉を紡いでいた。

 その程度には、俺の心は腐りきっていた。

「言うだけなら、誰にだって出来る。それこそ今の時代、ネットで調べりゃ、どんな名言だろうと、どんな素晴らしい思想だろうと、似せて猿真似をするのなんて、誰にでも出来る。出来てしまう……」

「……そうだね。キミの言う通りだ。あの詩は、自分の為に書いた文だもの。それじゃ、人の心には届かない。背景の無い言葉なんて、自己満足の言葉なんて、只の、インクの染みかあるいはデータ。その程度の言葉じゃあ、誰の心にも響かない。だから、キミの心に響かなかったとしても当然だよね?」

 映えた泣き笑いの表情で、彼女は言った。

 ややあって、彼女はふたたび立ち上がる。

 何度転んでも決して諦めない瞳が、再度俺を見下ろす。

 その冷たくも美しい視線は、矢張り何処か、心地よく沁み込んで。

「確かにキミの言う通り、言葉だけなら誰でも吐ける。だから私は、それを行動で証明する為に生きてきた。そして今も、それを証明する為に生きている。それを証明する事が、唯一、私の出来る恩返しだと思ったから。……だから、もしそれが、いつか叶うと思えていれば……」

 郷愁の混じる声で彼女は言い、そして彼女は、スカートのポケットに滑らかな指先を入れる。

「私は、それが叶うなら、何を犠牲にしても構わなかった。負けないでいられた。だから……。だから私は、今日、キミに贈る為だけの言葉を綴ってきたよ」

 教室に風が吹き抜けて、カーテンが揺れる。

 春風が彼女の髪を揺らして、夕日に輝く絹のような髪が、宝石のように煌めいた。

 彼女は、目を閉じて、そっとソレを取り出して、両手と共にソレを腹部に押し当てて、大事なものでも抱えるかのように微笑んだ。

 彼女の柔らかそうな腹部に当てられていたのは――、

 そうして、その目と言葉と、声と仕草は、俺だけに向けられる。

「これは。世界でただ一人、キミだけの為に書いた、私が書いた、本気で書いた、お腹の奥底で書いた……キミだけに贈る、ホントの言葉。だから、キミも――」

 そう言って彼女が俺に差し出したのは――。

「あれ? 何書いてるの?」

 デスクで執筆していた俺の耳へと、玲玲とした愛らしい声。共に生暖かい吐息が耳たぶをくすぐる。

 此処は彼女が『お伽の部屋』と名付けた四畳間だ。ほぼ無臭と言ってよかった本とインクの臭いの上へと被さるように、彼女の艶めかしい匂いが混じる。背中には、羽のような重みと、人肌の温もり。

 そして、胸板へと巻き付く淑やかな腕が、そっと俺を抱き締めてきた。

 その彼女の柔らかさを感じたまま、答える。

「今書いているのは、短編小説だよ。……やっぱり俺、どうしても書きたい物語があるから。だから、その為の第一歩」

「……そっか。ついに、決心したんだね」

 ギュッと抱き締めてくる腕。触れ合う面積が広がる。

 その真っ直ぐな思いとは裏腹に、彼女はちゃんと客観視をしてくれた。

「これから『どうせ無理だ』って言ってくる人達が幾らでも出てくるだろうね。……それはとても、大変な事だよ?」

「ああ。わかってる」

「ふふっ。イジワル言ってごめん。まあキミは昔からきかん坊だったから、キミがそうと決めたら、それこそ死ぬまで、絶対に諦めないんだろうね。……『どうせ無理だ』なんて詮無い事を言って止めるのは、やめておくよ。男の人は、大志を抱くものだって言うし」

「ありがとう。……姫様はよろしいのですか? 大志を抱かなくて? せっかく俺なんかよりも凄い才能があるのに」

「ふふっ。私は止めておくよ。今はこの幸せだけで沢山。王子様とも再会できたしね?」

「まだまだ不束者の王子ですけれど。精進はいたします。……まあ、姫様の事ですから、いつかは何かを成すんでしょうし、それこそ、俺が口出しする事じゃないか」

「うん。ありがとう。……私も、ずっとキミのこと信じてるよ? 例え、世界中の誰もがキミを信じなくなったって、私だけはずっと、ずっと、キミの事を信じてるよ。絶対に」

「ああ。知ってる。……それこそ、昔に思い知らされたよ」

「って、そろそろお迎えの時間だ。私、行くね?」

「ああ。気をつけて。いつもありがとう。愛してる」

 その一言で一喜したのか、彼女の口角が上がった。

 桜色の唇から舌先が覗き、禁果のように真っ赤な粘膜の先端が、艶のある唇をゆっくりとなぞり、濡らす。

 そして、淫魔の微笑を浮かべた彼女は、けれども聖母のような言葉を吐いた。

「私も愛してる。いつも愛してくれて、ありがとう。私、今はとても幸せだよ――」

 彼女は言って口付けて、俺の返答を舌で押し返してきた。

やがて、毎夜交わす程の激しさで互いの粘膜と体液を求め合ったあと、彼女はそれ以上は何も言わず、颯爽と部屋から出て行ってしまった。

 猫の目のような気性と忠犬のような信頼。

 それは彼女の野性的で純真な魅力を一層際立たせて、あの恋文を貰ってからこっち、滅法尻に敷かれている気もするけれど……、

 それでも、彼女への愛しさは日に日に増すばかりだった。

 今の俺には、彼女を抱く時に垣間見る傷跡でさえも、彼女の勝ち取った勲章に見える。

 それに彼女には、返しても返したりない程の恩があるのに、言葉のたった一つ、行動のたった一つでさえ、今でも彼女の方が多く与えてくれている。

 その幸せに気付かないほど愚かではないけれど……、

 でもきっと、この先、これから進む道、その長い道のりで待ち受ける数々の苦難が、どれほどの重さとなるかを実感できない程度には、俺も無知なのだろう。

 だから俺は、今ひととき、彼女に感謝して――、

 そうして、ふたたび、想い、言の葉を綴り始めた。

 どんなに辛くても、どんなに苦しくても、どんなに痛くても、どんなに恐くても、信じる事を諦めさえしなければ、それが報われる事もあるのだという、そんな事を。

 病める時も貧しき時も、大きな困難の時でさえ、二人なら、幸せだったから。そして、これからも、どんな貧苦や病苦、災禍があったとしても、二人なら、きっと乗り越えていけると想うから。

 そりゃ、報われない事もあるかもしれない。

 もう無理だって思う時もあるかもしれない。

 でも、それなら、自分のこの手で、

 報わせてしまえばいいのだ。無理ではなくしてしまえばいいのだ。

 諦めへと囚われていた俺に、彼女はそれを教えてくれた。

 だから、次は俺が、その事を証明する番だ。

 俺は……、

 彼女を、愛してしまったから。

 彼女に、手を差し伸べてしまったから。

 彼女に、道を示してしまったから。

 彼女を、幸せにしてしまったから。

 だから俺は、物語を綴る。

 あの結晶を生んだ僕らだから、

 泣き声じゃなくて、笑い声が満ちた世界へと、

 決して砕かれない心を育む為に。

 持つモノとして責務が、全てを救えと叫ぶから。

 あの小さくて頼りない手の平が、

 陽だまりのゆりかごで僕らへと向けられる、

 そんな訪れた優しい世界を、絶対に守ってみせる。

 二人でならきっと、何度でも立ち上がる事ができるから。

 夢を叶え、努力を実らせる、正直さと智慧とを兼ね備え、

 世の悪党なんかには決して負けない、信念と理性と止揚の確かな道を。

 清濁併せて嗚咽で流し、腹の底から出てきた言葉が、

 比翼の声と聞こえるように。

 いつか何処かで、誰かの耳へとそっと届いて、その慰となるように。

 信じられ、癒やされて、励まされ、前へと向いて、

 そうして、稟と研ぎ澄まれた心なら、

 誰かの手を引く力が、いくらでも、湧き上がるのだから。

 そうやって、自分の足で歩んだ先で――、

 生きる意味を見つけた場所で――、

 精一杯に与えて、歩み始めてくれるのを願って――、

 だから僕らは――、

 だって俺は――、

 彼女の愛に報いる為に、この世に生を受けたのだから。

 We are Waiting. Who…

 Why? into the World…

 Although we may seem Absurd and Agony…

 But, it was Believed and Believed. So Still…

 Confront and Challenge. Cooperating with at a Couple.

 It is our History.

 I`m so Happy.